曽我部マコトの言わせていただきます!

そんなに言いませんけど。

青春の始まりのシンドバッド。

高校2年生で修学旅行に行った。

河口湖のほとりの旅館に泊まって大広間の座敷で夕食をとったんだったと思う。

食事が終わって解散前に、

確か当時の担任の先生(♂)が一人の男子生徒に声をかけて、

おまえなんかやるんじゃないんか、みたいなことを言っていてなんだろうと思った。

すると数百人分の食事が載っていた低い長机は片付けられくっつけられて今思えばステージのようになって、

お行儀悪くもなんと男子生徒はその上に載ってなんと一人で歌を歌い始めたのだった。

私は呆然としてしまった。

「カラオケ」というものが出回ったのはその3年ほど後のことで、

だから伴奏もマイクも何にもなかったはずである。

 

 砂まじりの茅ヶ崎 人も波も消えて

 夏の日の思い出は ちょいと瞳の中に消えたほどに

 

知らない歌だった。

声はくぐもっていて早口で(サザンを真似ていたのでしょうから)私には何を言っているのかわからなかったけれども、

学年にはちょっと気の利いたお姉さんやお兄さんといった人たちの軍団がいて、

その彼らをはじめとする学年の数百人が歓声を上げてその歌を迎え入れたのだった。

そしてしばらくしてあのフレーズ。

 

 今何時?

 

ちゃぶ台下の生徒たちは当然のように叫ぶ。

 

 そうねだいたいね!!

 

(だいたい何時なんだろう?)

 

 今何時?

 ちょっと待ってて!!

 今何時?

 まだ早い!!

 不思議なものねあんたを見れば

 

私はただもう驚いてその光景を見ていたと思う。

ああ私たちはもう大人なんだ。

こんな大人のやるようなことを私と同い年のこの人たちはやっているんだ。

 

 ラララーラララ ラララー

 ラララーラララ ラララー

 

私は歌を知らないからもちろん一緒に声を上げたわけではないけれど、

黙ったまま大きな衝撃を受けていた。

これから青春が始まるんだなと思った。

その衝撃がどんなに大きかったかと言うと、

半世紀も後まで覚えていてこんなところに書いてしまうくらい大きかったんでした。

(小さな刺激で圧倒されるんですよね私。)