曽我部マコトの言わせていただきます!

そんなに言いませんけど。

追手門学院大手前高等学校「あげとーふ」

「あげとーふ」は痛快だった。
まさか「あげとーふ」なんてタイトルの芝居にここまで揺すぶられるとは思わないので、
あやうく見逃すところであった。
あぶないあぶない。

高校生の男の子たちは時々、
われわれ大人にはどうにも止められないパワーでもって「バカ」をやり続けるものだが、
この作品では舞台の上でそれが炸裂し続けた。
これは驚くべきことだ。
そこのところを狙っても痛々しい空騒ぎになることの方が圧倒的に多いのだから。
最初「なんだこれは」とあっけにとられていた私も、
「何が出るかな、何が出るかな♪」あたりではもう「バカパワー」とでも言うべきその力に、
何をやっても心の中で拍手喝采
汲めども尽きぬその「パワー」に痛々しさへの危惧など吹き飛んで「もっと、もっと!」と胸は躍った。
会場も乗りに乗っていた。

なんといっても役者がキュート。
特に「マーボー」役の芝居のうまさには唸った。
ここ5年ばかり「速報」なんて見なかったのだが、
「あげとーふ」関係の記事読みたさに手にしてみれば、
通しのたびにネタを変えているとか書いてある。
ステキすぎる。
そう言うわけで「季刊高校演劇全国大会特集」の台本にはなかったネタも多かった。
「これくらいの、おべんとばこに♪」あたり、
台本にはなかったのだが、ぜひとももう一度読みたい。
「マーボー」のノリツッコミを思い出すたび飽きもせずに噴き出している次第だ。
また、「ヒメ」役も達者だった。

台本は24歳の男性顧問が書いたということだが、よくできていると思う。
好きなセリフがいくつもある。リズムがいい。
「ケン、行ったら殺す、死んだら殺すからな!」
「リーダー、俺、途中下車します、あげとーふ!(I get off!)」
などのセリフ、面白いだけでなくかっこいいと感じた。
内容にも感心している。そのことについてはまた今度書くかもしれない。

徳島のF田先生にお会いした。
この「あげとーふ」について、
「府大会では3位だったし、近畿大会でこれが全国行きと決まったときは憤りさえ感じたものですが、見事に創って来ていましたね。」などとうかがって、
ああ、脚本も役者も才能だけではなく、多大な努力があったんだな、と少しく安堵を覚えたりした。
まあ、それほどすごい才能を感じたわけです。
もうこれだけで、島根まで来た甲斐があったと思いましたから。

フィナーレは幕が下り始める前に拍手が来た。
そして幕が下りて、音楽が終わって、客電がついた後までそれは続いた。