「心配なのはよくわかる。
建てた者が、たしかに建物の弱みを一番よく知っておる。
だがな、建ててしもうた後では、もはやどうにもならぬ。」
「それはそうじゃが。」
「ならば忘れろ。ここまで、できる限りのことをした。
天下一の柱を見つけ、天下一の腕で組み上げた。
これ以上できることはなにもない。この天主は、わしそのものだ。
倒れるなら、わしもいっしょに倒れる。それだけのことだ。」
父親の言葉が、やけにさっぱり潔くひびいた。
「しかし、気になることはないのか。」
「あるとも。大ありだ。若いころはことにそうだった。
おまえの百倍も気に病んでおったとも。
気になって眠れなんだこと、夜中に見に行ったこともたびたびじゃ。
だが、建ててしまったものは、どうにもならぬ。
そのことに気づいてから、
わしは目の前の仕事でけっして手を抜かぬようにした。
大工にできるのはそれだけだ。
それ以外になすべきことはない。」
去年の2年の進研模試の小説文。誰の小説かは今わからないのでまた書きます。
私は今日練習に行かなかったけど、
やるべきことはやらせたからいいんだ。
それから夕方テレビの部屋の住人とほてほて川べりを散歩した。
なんだか嬉しそうだった。
目の前のことに悔いなく取り組んでけばいいんだよ。泣かなくていいんだ。