曽我部マコトの言わせていただきます!

そんなに言いませんけど。

答辞バナシ。

朝から清掃中の生徒たちが「答辞楽しみじゃなあ。」とか話しているし、
去年警備で答辞を聞けなかった先生はビデオで見てくれたとか聞くし、
一昨年は体調を崩した生徒が「答辞を聞きたいから。」と体育館を出たがらなかったというし、
今年体調を崩した生徒は案の定、答辞を前に戻って来た。
プレッシャーは募るばかり。

今年の答辞は野球部の生徒である。
で、卒業式の進行は野球部監督の先生。

「卒業生代表答辞。代表、N!」
「はい!」

奇しくも師弟でのやりとり。
Nが皆に礼をして登壇する。
そこで、「一同起立!」の号令がかかり、
Nが校長に礼をして答辞を読み始める、
はずだった。
ところが、号令がかからない。
Nがとまどい、振り返りかけたところで号令が入って、まあ無事答辞に移った。

卒業式は学校行事の中で最も大切な行事とされている。
進行を任された教員が進行を忘れることはあり得ない。ましてや皆からの信頼絶大の監督のことである。
人づてに聞いたところによると、
今まで長年野球部を持ってきたが、野球部員が答辞を読むなどと言うことはなかった、
必死の面持ちで返事して立ち上がったNと偶然目が合ってしまい、
胸が詰まってすぐには声が出なかった、ので号令が遅れてしまったということだった。
気持ちはものすごくよくわかります。
でも監督は男の中の男という感じの先生だから、この真相には驚いた。
ドラマチックだなあ。

Nの声は出だしから、予想以上の響きと速度で始まった。
読み始めてすぐ女子が何人か泣き始める。
自分も目頭が熱くなってきたころ、
隣の席の若い男の先生が鼻をすすって盛んに泣き始めたので、ちょっと驚く。
そう言えば、彼は高校時代野球部だったと言っていた。
斜め前の男の先生がハンカチを取り出す。
前の先生もその横の先生も泣いている。
自分もハンカチで目頭を拭く。
よかった。今年も成功だ。

私は普段あんまり人の役に立ってないから、
こんな形で卒業式に貢献できるのは、多分とてもいいことなのだと思う。
まあ、できたから言えることではある。