曽我部マコトの言わせていただきます!

そんなに言いませんけど。

卒業式後のホームルームバナシ。

前にも書いたとおり、
私は副担任であって、クラス担任は大学時代の合唱団の後輩に当たる先生だ。
その彼が、
最後のホームルームの最後の最後、
思いつめたように「何十年かぶりに歌を歌います。」と言い出したのだ。びっくりである。
「僕が担任をするのはこれが最後だと思うので。」

それから私の方を向いて、
「すみません、声は出ません。」と言うので、
「期待していませんよ、出るわけないじゃないですか。」と言ってあげる。
それから、教室の後ろに立ち並ぶお母さま方に、
「大学時代はいいバリトンだったんです。」と説明してあげる。
「あ、大学時代は二人とも合唱団でして。」と付け足す。
みんなもびっくり。
タイトルも言わずに歌い始めたその歌は、なんとなく予感があったんです。
千の風になって」

それは大学時代と比べたら全く声は出なくなっている、
だってあの頃は毎日毎日ずっとずっとずっと歌っていたわけで、
どうすれば歌がうまくなるのかずっとずっとずっと考えていたんだから。
だけど一生懸命歌っているのを聴くと、少しじんとする。
泣いている生徒もいる。
さびの部分だけ、斉唱だけど、私も歌った。みんなさらにびっくりしていた。
ハモれたらいいんだけど、私はソプラノだったので、ハモるのは得意じゃないのだ。
誰かにハモらせていたわけなので。

図らずも担任と副担任がなんだかわからんクラシックみたいな声で歌う卒業式の教室。
まあこんなこともあってもいい、のかなあ?
終わってみれば大拍手だ。
「え、30点でしたか。すみません。」と、彼は私に聞くふりをして勝手に謝ってみせるのだった。

もう声も出ないのに「聞かせてやるぞ」みたいに歌い始めるのではあまりにもプレッシャーが大きい。
その難関を私に謝ることでクリアできて本当に感謝しているんだ、
みたいなことを言っていた。
そうだったかもしれないなあ。

お役に立てて何よりでした。