曽我部マコトの言わせていただきます!

そんなに言いませんけど。

甲府昭和「靴下スケート」(春季全国報告その1)

春季全国大会で上演したのは9校。
私が一番印象に残った芝居は、
2日目2校目、甲府昭和高校「靴下スケート」だ。

二人芝居。(「全校ワックス」の「大宅さん」と「上田さん」である。)
まず脚本が素晴らしい。
二人の登場人物が「不登校中学生」と「家庭教師のお茶の水女子大生」であるという設定が、
序盤に無理なく観客に知らされていくのだが、
こんなところから用意周到、かつ、さりげなくて、私は嬉しくなってくる。

すべてがさりげないし、二人は舞台上に1時間ずっと居続けるだけなので、
筋がないように思う人もいたのかもしれないが、
明らかにドラマは展開されていった。
何によってか?
おおよそ「説明ゼリフ」の対極にある、センスにあふれた、生きたセリフによって。
または長い「間」、「間」とも思えないほどの「間」、また彼女らの真実の動作によって。

クライマックスは「中学生」が「靴下スケート」をするシーンである。
不登校生の悩みを理解するようなセリフは全くない。
それどころか彼女をののしるような、嘲るようなセリフが続いた。
けれども無言で靴下スケートを続ける彼女を見つめるうちに、
観客の胸の中には、家庭教師の女子大生の心が流れ込んでくる。
この不登校生への同調、憐れみ、事態の深刻さが、滑稽さの中でしんしんと募っていく。
ふざけているとか微妙だとか言う向きもあるかに聞いているが、
この脚本はどうしても優れていると言わざるを得ないものだ。
言葉だけを信じず、しかしその言葉はみなまさに適切だった。

もう一つ特筆すべきは、役者二人の演技の瑞々しさである。
顧問が書いたセリフは彼女らの内面から発せられていた。
あまりにもそうだった。ので、越智が作者の中村先生に質問したのであるが、
「ODA」を「おかん、いつまでも、あかん。」と言い、
「EU」を「いつまでも、うなぎ。」と言ったくだんのあのシーン。
「中学生」が「NHK」というセリフを相手に聞き直したときや、
「家庭教師」が相手の答えに本気で笑ってしまった(ように見えた)とき、まさかと思ったのであるが、
やはり、二人ともアドリブだったのだそうだ。
瑞々しさもここに極まったという感じだが、
だからと言って真似すればいいかというと、もちろんおいそれとできるものではないだろう。
本当によい芝居を観ることができたと思う。

あと、2日目1校目、北海道北陵高校「バリバリ村の市民会館」と、
3日目3校目、青森中央高校「最終試験場の9人」もよかった。
「靴下スケート」に力を割きすぎて疲れたのでこのへんで。(また書けたら書きます。)