曽我部マコトの言わせていただきます!

そんなに言いませんけど。

米原万里「すごい」人。

越智君経由で、
米原万里の「打ちのめされるようなすごい本」を読んでいる。

中で紹介されている「すごい本」も「すごい」けれど、
彼女の読書量や圧倒的な教養の深さや能力の高さがごく普通のこととして描かれていることをまず「すごい」と思う。
そして当然、彼女を取り巻く人々の教養や能力もたまらなく「すごい」のだった。
天才の周りには天才がたくさんいるものだなあ。
本を読んでいてときどきそういうことを実感する。

それはさておいて実はその米原万里さん、
3、4年前だか、なんと、川之江高校の文化講演でお話いただいたことがあるのだ。
教員などをしていると年に一回はこうして著名人の講演を聴く機会があるが、
彼女の講演の格調の高さは、他とは完全に一線を画していた。
ロシア語通訳協会初代会長、
世界を飛び回って同時通訳なんてしている才女、その著書多数。
物を知らない私は紹介文程度にしか彼女を知らなかったが、
その内容は、恐ろしくハイレベルであって、恐ろしくわかりやすかった。
最後に彼女は全校生徒に一人一枚のプリントを配布、
そして講演終了後、そのすべてを回収するよう命じて帰った。

そのプリントは、八角形だかの形からしっぽのように一つ何かが飛び出した図面だった。
それはサミットの同時通訳の状況を図示したもので、
各国語に通訳されて各国首脳に渡る発言は、
日本に渡るときだけ日本語には直接通訳されず、
英語に通訳された上でそれが日本語に訳されて日本に渡るのだ、
それがしっぽのように見えるのだ、そういう図面だった。
彼女は抑えた口調で、
母国語以外に訳されるとき失われる膨大なものの存在を語った。
そしてそれが二重に訳されるときの危険を言った。
日本は、世界の実情を、アメリカを通してしか聞くことのできない位置にいる。
こんな片田舎の高校の体育館で彼女は私たちにそれを知らせてくれたのだ。
(しかしなんということだろう、あの場にいた生徒の大多数は理解力のあまりの低さからくる眠気と戦うのに精一杯だったのだ。)

その後すぐ、彼女の著書を越智君が二冊貸してくれたので読んだ。
私は、なんて頼もしい天才が日本の将来を憂えてくれているのだろうと思った。
あれから数年で亡くなられてしまうなんて。