曽我部マコトの言わせていただきます!

そんなに言いませんけど。

四国大会本番まで。その1

近年自慢のキャスト、犬と猫。
リハ時のホールの残響を考慮して、今回は本番までに発声を変えさせることにしました。
彼女らなら対応してくれるだろうと信じて。

そんなわけでリハ後はずっとホワイエで(これは小さな声で)、
初日後はずっと美術館裏の公園で、
声の調節がてら私は彼女らに練習させていたのです。
ホワイエはよかったけれど、日の暮れた公園は寒かった。

夕方から夜になり、明日のクリスマスイブには満月になるという丸いお月様が天空に現われました。
私が演出しているところからは、月はちょうど正面の大きな木の梢のあたりに見えていて、
とっぷりと日も暮れたのに、あたりはほんのり明るいままで、私たちは2時間ほども練習することができたのでした。
そう言えば雪の積もった四国大会もあったんだった。
寒いとは言え、とても12月末とは思われない気温。
満月と、この暖かさと、この二つがなかったら到底できない練習でした。
そんなわけで私たちは、技術面では全く問題なく本番を迎えられるまでになったのです。

犬と猫は、放っておいてもたいがい常に絶好調です(まあ犬は時々体調を崩すけれども)。
でも今回は違っていた。
その日の晩から犬も猫も、「突然ドキンとする。」と言い始めました。
新居浜南の上演はとてもよかった。」と私が言ったせいでしょう。
あれ以上の上演をするためには、自分たちの最高を出すしかない、誰もがそう思いつめていました。
そうしてそんな心と体のありようは、おおよそ「演劇」とは対極に位置するものです。そうではありませんか?

当日の朝、二人は朝ごはんをほとんど食べられませんでした。
夜明け前から起き出して体を起こすよう指示していましたが、
ホテルの駐車場で鬼ごっこをさせている途中、犬がスピードを出しすぎて、すさまじい勢いで転びました。勢い余って一回転するくらい激しく。
名前を叫んでみんなが駆け寄りました。猫が大声を上げて犬に抱きつきました。
だいじょうぶ、と笑っているけれど、右手が、劇中あれほどラケットを振り回さなければならない右の手のひらが、
アスファルトに手をついて倒れたため血で真っ赤になっていました。フロントで消毒をしてもなかなか血は止まらない。夜が明ける。なんて痛そうな小さい手のひら。

そんなことがあったのに、朝食の席で、
犬は言いました。手のことなんて考えてない、ただ緊張している、と。
そしてそれは、猫もでした。