曽我部マコトの言わせていただきます!

そんなに言いませんけど。

わかるんだ。

ミュージカルで半日以上学校を空けて仕事が溜まったもんだから、
昨夜1年の教員はけっこう遅くまで職員室で採点していた。
縦割り採点(各クラスを一人が採点するのでなく全クラスを通して大問ごとに一人が採点する方法)だから、
家で採点していたら月曜のテスト返却は不可能、
職員室でみんなでテスト冊子を交換しながら採点しなくちゃいけないわけだ。
さて疲れもピーク。
 
「眠いからコーヒー淹れようかな」と伸びをした若手数学教員T先生が、
この春前任校を去るとき生徒にもらった一人用コーヒーメーカー(もちろん手動)を、
まだこの職員室で使えないでいるのだとぼやいた。
「使えばいいじゃないですか。」と採点しながら私。
「いや、2学期くらいから様子見ながら使えたら使うかなーって。」
「なんでですか?」
「だって来たばっかりでそんなんしてたら(声色変えて)『あいつ講師のくせにマイコーヒーメーカーて調子乗っとんちがうんか~』って言われそうで。」
「誰?誰が言うんですかそれ?」
「いや誰かが。僕のいない時に。」
「こわいなあそれ、若いうちからそんな気遣ってかなきゃいけないんだ。」
 
そこからコーヒー飲んだら眠れないとか眠れるとかいう話が出て、
すると彼より数歳年上の若手数学教員W先生が、
「僕コーヒー飲んでも全然寝れるから困るんですよね。」
「あ、僕も。」と採点しながらT先生。
「なんでですか?いいじゃないですか眠れるんなら?」と同じく採点しながら私。
「だって職員室で眠くなってコーヒー飲んでも全然眠気取れんのですよ。まさか居眠りするわけにいかんやないですか。」
「いやあんまり眠いなら数分居眠りした方が能率上がるらしいですよ。」と私。
二人とも運動部で土日もないし毎晩帰りも遅いんだから平日昼間に眠いこともそりゃあるでしょう。
「いや僕なんかがそんなことしたら(声色変えて)『おいあの〇〇(高校)から来たやつ職員室で居眠りしとったんちがうんか~』って言われそうで。」
「そうそう、(声色変えて)『調子乗っとんちがうんか~』って。」
「だから誰?誰が言うんですかそんなこと。」とおかしくなって私。
「誰かが。陰で僕らのいない時に。」
と二人が言って残ってた先生で笑った。
 
「ああそんな気を遣ってこなかったから人生こんなことになっちゃってるのかもしれないなあ。」と笑ってみたけど、
反対に、
二人の気持ちはよくわかる気もするのだった。
 
値踏みされている、
力のない者を見限ろうと構えている、
評価の海の中でいつも評価にさらされている、
転勤して来てから2年もそれ以上も、
私もそんな気配を感じている。
実体のない魔物に負けないと、
そう思う時点で踊らされている、
実体はなくても存在していると、
なぜか思い知る時もある。
けれど、
わけのわからないまま疲弊していくのはやめよう。
あなたたちのやってることは間違っていない。
「神経の細やかさ」はそりゃ持っていた方がいいけれどそれはどうしても必要なわけじゃない。
どうしても必要なのはどちらか選べと言われたらむしろ前に進んでいく「神経の太さ」の方だ。
つぶれないでいい仕事をしてほしいな。