曽我部マコトの言わせていただきます!

そんなに言いませんけど。

上演当日のことあれこれ。(春季全国報告その7)

新学期のあわただしさの中、
日に日に記憶はセピア色になっていくので、
すっかり忘れてしまわないうちに、せめて当日のことくらいは何がしか書き残しておこうと思う。

当日朝、
5時半起きで準備を済ませ、自由劇場に向かった。
リハ室で柔軟、発声。
続いて交流会で踊ったダンスを校歌に合わせて踊ってみる。
これはけっこう自分たちにウケて、体も心もいい具合に温まった。
8時半から即ゲネプロ
観客はけっこういる。(多分滝高校の皆さん。)
上演直前のキャストに、「いい加減さを大切にしてほしい。」ということを伝える。
「演劇の神様は真面目な人にではなく自由な人に微笑むのだ。」と。
最初怪訝な顔をしていた8人は、
了解するにつれて笑顔になる。
そしてゲネの幕が上がった。

その時の「花柄マリー」は、それまでのどの舞台とも違っていた。
前半は固かったが、中盤から伸びやかな、影響し合った舞台になった。
初めて見せる表情、仕草、思ってもいなかったその声音。
劇団四季のスタッフの方からも言われたが、特にこの時のソーマの出来はすさまじかった。
客席で、何十回となく観たその芝居を観て、
私は新たな発見に驚き、笑い、涙ぐんだ。

さてゲネを終えて私と越智は困った。
直前の通し稽古ですべてを出し切ることは、
この場合、どうしても必要だったし、反面、恐ろしいことでもあった。
本番へのモチベーションをどう作るか。
生きのいい材料を運ぶ宅急便の運転手のような気持ちである。
ダメを出し、他校のゲネを見、楽屋でつまらない雑談をして過ごした。
私は単にリラックスしてるように見えたかもしれないけれど、すべては計算ずくだったのだよ。
(と思っていたけど、今にしてみるとなんだかホントにリラックスしていただけかもしれない。)

本番は、さらに新鮮な舞台だった。
私たちは、力を出し切ることが出来なければそのまま帰ってしまいたいとさえ思っていたのだ。
けれどもそれは、およそ考えられる最高の出来だった。
スタッフも完璧だった。
キャストはゲネプロとはまた違った魅力を見せた。
今日この日のために気の遠くなるほど長い間練習してきた。
それがこの一時間に結集される、
すべての力を出し切れる、
その嬉しさ、誇らしさ、安堵、高揚、至福の心地。
張り詰めた思いで1時間を過ごす。心が震える。涙を流す。
緞帳が下りる。
越智と握手する。
幾人かの人から呼び止められ、お褒めの言葉をいただく。

その夜の反省会も、ホテルの部長の部屋だった。
一人ずつ感想と反省を言うのだが、
一人ひとり、いつまでもしゃべり続けるので、いつまで経っても終わらない。
またもや部屋は耐え切れないほど暑くなった。
それでも終わらず、部屋を移動して続けるのだ。
拍手して、笑って、笑って、時に泣いて、私たちはいつまでも話した。
そう言えば、ジュースの一本もなかったのだが、楽しくて楽しくてたまらなかった。
この時のみんなのハイテンションについて越智は後日こう言った。
「あいつら、今までの人生であんな楽しい目にあったことなかったんでしょう。」
本当にそうかもしれない。
団結した部だと思っていたけど、帰って来てから「団結している感」がワンランク違う。
努力して、努力して、その努力が実ること、思うような結果が出ること、何よりその場を与えられるということ。
若い時期にこの体験は貴重だ。
本当に、本当に来ることができてよかった。