曽我部マコトの言わせていただきます!

そんなに言いませんけど。

ああ暖かくなってきたなあ。

田んぼで年配の女の人がワラを焼いている。
赤い炎が上がり、
勢いよくパチパチと音を立てる。
彼女は動じず炎を見ている。
この窓から50メートルくらいの光景。

これは火事にはならない火、と思う。
なぜならその女性がいるから。
竹の破裂する音が聞こえる。
彼女は別のワラのかたまりを引きずってきて、新たに火にくべる。
手馴れた作業。
ツバ付き帽子。
手に持った小さなカマ。
薄緑の分厚そうなゴム手袋。

開高健だったか、
「こんな台風は20年ぶりだった。」と話す故郷のお年寄りの言葉に、
そんなふうに話せる大人に尊敬の念を持っていた、そして今の自分にもその科白は言えない、
というようなことを書いていたっけ。

新たな炎が上がる。
バチバチと音が高くなる。
一つのワラ束がくすぶり終わってから次のワラ束に火をつけているんだな。
私にもそんなふうに無意識に自信を持ってできることは身についているんだろうか。

この田んぼにはもうじき豊かな水が入り、
6月には水田となって空の雲を映すのだ。