退職すると健康保険が切れるので、
任意継続の諸手続きで銀行に出かけた。
退職後最初の入学式はだから、
授業もないし部活もビラ撒きだけだったので、
なんと、登校しなかったわけだ。
銀行で下ろしたお金を別の銀行に支払いに行く。
何十万もの現金を一人で抱えて歩くのがこわいので越智くんについてきてもらった。
ひ弱な女であることが恨めしい。
さていい天気だ。
銀行に向かう途中、
幾組もの入学生と、その晴れやかに正装した御両親とすれ違った。
「こんな日に、学校の外歩いてたりすると、ああ退職したんだなーって思う。」
「あーそうですねー。」
とか言いながら歩く。
別の生き方の始まりなんだな。
ところでATMでお金を下ろそうとすると、
越智くんがボックスの中に入りたがらない。
「オレ怪しいヤツと思われるんで。」
とか言ってる。
なるほど、
「ATM操作をさせているオレオレ詐欺の男」に見られるわけか。
笑ってしまった。
屈強の男は男なりに心配のタネはあるもんだなあと思う。