曽我部マコトの言わせていただきます!

そんなに言いませんけど。

最後の説教。(H9.3.1.生徒会誌「門」 305HRへ)

「最後の一葉」というO・ヘンリーの短編知ってますか?
病気の少女が、つたの葉の最後の一枚が落ちた時自分の命も尽きると思う、というあの物語です。
売れない絵描きの老人はそれを聞いて嵐の夜、
塀につたの葉の絵を描きます。
それに力を得て少女は助かり、老人は肺炎で死んでしまう。

私は最近この老人について考えます。
老人の絵が、
老人になるまで売れなかったのはなぜだろう。
老人が最後に描いたこの絵だけが魂を持ち、
人の命まで救ったのはなぜだろう。

私は子どもがいないものですから、
基本的にはもう皆さんが生きてるだけで「親御さんはどんなにかわいいだろう。」とか思ってます。
だけど皆さんを見ていて、
時々どうしようもなくはがゆくなるのです。
どうして自分の力を出し切らないのか、
出し切って失うものがそんなに大切かな、と。

老人の絵がそれまで売れなかったのは、「最後の」何かが欠けていたせいです。
老人はそれをつかんで死んでいった。
この老人は、死ぬ時幸せだったのではないでしょうか。
そしてこの老人がつかんだ最後の「何か」とは、
まさしく皆さんに今欠けている「何か」なのではありませんか?

嵐の夜、
たとえ自分の命と引き換えにしても必ず本物の一葉を塀に刻印しようとする心、
冷たい風、
頬打つ雨、
もうだめだと何度も思いながら「最後の一葉」を仕上げる心を、
どうかあなたたちの人生の中に。

私からの別れの言葉にかえて。