昔の文章・転載
「現代文てどうしたらできるようになりますかね?」 と、先日掃除の時間に男子生徒から尋ねられた。掃除をしながらざっくばらんに話すので教員の方も本音が出る。 「そうねー、現代文て、できる人はできるし、できない人はできないよねー。」 「やっぱり昔か…
5年ほど前に「初級編」を、また3年前には「上級編」を掲載したので、今回は「中級編」を書いてみようと思います。さて、「中級編」に入る前に、復習として今までの二つをかいつまんでまとめてみましょう。 まずは「初級編」です。読書感想文を書くのが苦手…
本校には毎年秋のHRに「読書のすすめ」という時間があって、 そこでは優秀な読書感想文を紹介するとともに教員の「選評」をプリントにして全校生徒に配布している。 私はほぼ毎年そこに選評を書いているのだが、 ここに掲載したのはH19が最後だ。 H2…
「演劇をやるとアカになる」というあの有名なセリフを直に聞いたことこそないけれど、確かに愛媛は演劇の盛んな地ではなかったと思う。世事に疎い私など、平成6年に高校演劇の全国大会が愛媛県にやって来るまで、一度もナマの舞台を観ることなく暮らしてい…
よい感想文を読ませてくださいと毎年ここで訴えているのだが、今年もいっこうによい感想文が増えなかった。なぜだろう。「主題を読み取れ」とか「素直の先の感想を持て」とか「自分の切実な問題に触れろ」とか小言を繰り返してきたが、実際それは形になりに…
中庭に、全国二連覇記念の石碑が置いてある。「ホット・チョコレート」。「七人の部長」。彫られているのは、それぞれの優勝演目なのである。四国でただ一校が行く夏の全国に出場し、そこで優勝し、あまつさえそれを二度繰り返した。あれから五年。歴代の部…
春、思いもしなかったこの学年の、あなたたちのクラスの担任になった。 始業式後のHRに行こうとすると、あなたたちは廊下に並んでたまっていた。 「何やってるんですか。さっさと教室に入りなさい。」 今にして確信するけれど、あなたたちはあの時、見知ら…
「最後の一葉」というO・ヘンリーの短編知ってますか? 病気の少女が、つたの葉の最後の一枚が落ちた時自分の命も尽きると思う、というあの物語です。 売れない絵描きの老人はそれを聞いて嵐の夜、 塀につたの葉の絵を描きます。 それに力を得て少女は助か…
たとえ死ぬ時であっても前のめりに死んでいきたいと、 坂本竜馬は言ったと、 星飛雄馬が言っていた。 常に自分の前にある目標に向かって全力を出し尽くしながら進んでいく。 スバラシイ。 私も今まで前のめりだった。 いつゴールが来てもヘッドスライディン…
3月1日、卒業記念に、身内だけで小さな公演を開いた。タイトルは、『七人の部長・エピローグ』。「七人の部長」のうち五人が卒業するので、越智優が続編を書き下ろしてくれたのだ。部長たちが卒業する日のひとコマを描いた、20分足らずの劇だった。 ラス…
審査発表。全国優勝するつもりでいたのに、四国なんかで敗退してしまった。私たちは入賞さえしなかったのだ。女子部員が泣き崩れた。無理もない。二年生には最後の大会だ。夏休みもなかった。さまざまな軋轢を乗り越え、本当に多くのものを犠牲にしてここま…
レッスン1 「他人の悲しさを泣けますか」 お茶の水女子大学の藤原正彦教授によると、小学一年生は仲のよいお友だちのお母さんが亡くなっても泣きませんが、小学六年生は泣くことができるそうです。 その子は、自分が悲しいのではなく、友だちの悲しさを想像…
私は体育が苦手なので、今さらどれほど「スポーツは楽しいものだ」と言われても、おそらく一生スポーツを楽しむことはないと思います。しかし私は小学校から大学まで、体育の授業と言えばそれはそれは涙ぐましく一生懸命に取り組んできたつもりです。世の中…
皆さんはよく本を読む高校生ですか? 私はあまり本を読まない高校生でした。 当時の私はどちらかと言えば漫画をよく読んでいたと思います。よく読んでいるだけにその良し悪しには非常にうるさく、「この漫画家には才能がある」、「人気はあるけどこの漫画家…
「いったい感想文の書き方って、小学校で教えてないんでしょうか?」 夏休み明け、ある先生からこう尋ねられた。自分のクラスの読書感想文を読んで、あまりの幼稚さにショックを受けたらしい。読書感想文なんて「読書して感想を書けばいい」のだから教える必…
実は私、この言葉が嫌いで、誰かが誰かをこんな調子で励ましているのを聞くと(漫画とか、新聞のヤング・カウンセリングとか)、おいおい、いいのかい自分なんか信じちゃっても、とか思う。 しかし読書感想文を書くときは、これは別です。読んでいて思うんで…
読書感想文というと思い出す作品がある。高校時代、後輩が書いたもので、リルケの詩集の感想文だった。県で入選か何かをしたのだろう、学校新聞に全文が掲載されたために読んだのだ。妹の友人の書いたそれは、「詩の感想文」というよりは、まるでそれ自体が…
世の中で一番大切なものは何であろうか。 ある日友人とそういう話をすることがあって、私は思い切って『震える心』であると言おうとしたが、友人が先に答えた。それは『揺れる魂』であると。 読書感想文とは、その『揺れる魂』がいかに震えたかの記録であろ…
『ホット・チョコレート』を書いたのは、全国大会のちょうど一年前のことだ。あの頃私は、一人で脚本を書き上げたこともなく、進むべき道も見えず、演劇から手を引くべきか本気で迷っていた。そんな中途半端な気持ちが、生徒にも伝わってしまったのだろう。…
一年近く上演してきたこの『ホット・チョコレート』も、今日が最後の上演となります。まさか国立劇場で有終の美を飾ることができようとは、夢にも思っていませんでした。 四国大会で最優秀賞をいただいた時とは、まるっきりメンバーが違います。年度が変わっ…
「来年こそは県大会するりと抜けて全国だぜィ!」 昨年度の『門』にそう書いたMが、春になったとたん、急に転校してしまった。県大会を抜けることさえできなかったあの時、翌年四国で優勝して全国なんて、夢のまた夢だった。それでもためらうことなく「全国…
― 失うことを恐れてはいけない。 失うものは、もとから自分のものではなかったのである。 ― 去る十二月の四国大会で、私たちは最優秀賞「文部大臣奨励賞」を受賞して、全国大会への出場を決めた。私にとっては川之江高校へ来て以来の悲願だった。二年間、観…