曽我部マコトの言わせていただきます!

そんなに言いませんけど。

メイキングオブ読書感想文(読書感想文3年生選評 H16全校プリント掲載)

「いったい感想文の書き方って、小学校で教えてないんでしょうか?」
 
 夏休み明け、ある先生からこう尋ねられた。自分のクラスの読書感想文を読んで、あまりの幼稚さにショックを受けたらしい。読書感想文なんて「読書して感想を書けばいい」のだから教える必要なんてないと思っていたが、年々ひどくなるみんなの感想文を目の当たりにしていると、そうも言ってはおられまい。よろしい。少しはましな読書感想文の書き方を教えましょう。これであなたの感想文も、来年度にはレベルアップだ。
 
 まず、国語がものすごく不得意な人へ。(目安としては、この文章を読むのもちょっとしんどい、と思う人。)あなたは本屋か図書館で、自分に興味のありそうな薄い本を選びます。サッカーの中田選手の言葉、とか(イチローもいいね!)、最近出回っている「元気を出して」系の詩集でもかまいません。そうして、印象に残ったシーンや言葉を抜き出して、それから(ここが大切!)、「その部分に対する自分の感想」を書いてください。自分の生活に結びつけて書くとさらによくなります。この手順を2回~4回繰り返すと原稿用紙も埋まりますし、自分にとっても担任にとってもまあまあの感想文ができあがります。試してみましょう。
 
 次に、簡単な本なら読んでいるという人へ。オーケー。あなたはその本について、前記の人と同じ手順で感想文を書きなさい。そうして最後に(ここが大切!)「まとめの感想」を3行~半ページほど付け加えるのです。ここまでできれば、あなたの読書感想文は、クラス代表となるかもしれません。嘘ではありません。
 
 また、どうせ書くならこの「最後のまとめの半ページ」を、力強い、読む者の胸を打つ文章にしてみてはどうでしょうか。(1ページ以上でもかまいません!)さてそのためには、あなたはその本の「主題」を読み取る必要があります。主題はその本全編を貫いています。その主題(筆者の言いたいこと)を、高校生であるあなたはしっかりと受け取り、それに対するあなたなりの結論を心に持つのです。それを最後に書くつもりで書き進んでいけば、前半で選ぶエピソードにもおのずと関連性が出てきます。そうしてたどり着いたあなたなりの結論が、あなたの人生の切実な問題に触れていれば、その読書感想文はきっと人の心を打つものとなることでしょう。
 
 最後に、自分は国語がまあ得意だと思う人へ。勉強もしないのに小学校の時からわりとできる、文章を書くのも嫌いじゃないという人たち。あなたたちは、名作を読みなさい。名作の感想文を書け。今年のベストセラーなんか読んでちゃだめだ。主題がうすっぺらいから。夏目漱石太宰治中島敦遠藤周作カフカヤンソン。探せないなら「新潮文庫の百冊」みたいな目録に記載されている本を片っ端から読んでいくのもよいでしょう。課題図書を読むのも一手です。特選の稲井さんの感想文は課題図書の感想ですからね。

 誰もが百メートルを十秒で走れるわけではありません。けれど、誰もが今より速く走ろうとすることはできます。来年の夏休み明けには、自分の能力を使い切った読書感想文を読みたいものです。期待していますよ。