曽我部マコトの言わせていただきます!

そんなに言いませんけど。

本不必有価値。(読書感想文3年生選評 H17全校プリント掲載)

 皆さんはよく本を読む高校生ですか? 私はあまり本を読まない高校生でした。

 当時の私はどちらかと言えば漫画をよく読んでいたと思います。よく読んでいるだけにその良し悪しには非常にうるさく、「この漫画家には才能がある」、「人気はあるけどこの漫画家は凡庸だ」、「今回の読みきりは彼女にしては駄作である」、「出色の新人が出た」、などと誰も聞いていないのに勝手にうんちくを垂れていた、オタクな女子高生でした。おかげで兄からはよく「おまえは何サマだ」、「何をもってそんなえらそうなことが言えるのだ」、と叱られていました。兄というものは一般に、妹がオタクであることを許せないものですからね。(兄とは今でも気が合いません。)さて、そんな私が、漫画でなく「本」となると、すべての本を価値あるものと思っていたようなのですから不思議です。

 当然のことですが、本の中にも、素晴らしいものと、志の低いものとがあります。私がこれに気づいたのは(なんと)大学を卒業してからのことで、太宰治の作品をすべて読み終わった時のことでした。この頃から本を読むようになったと思うのですが、太宰を読んでいる間は、読み終われば次の作品を読めばよいのですから、長い間とても楽しかったし何度も何度も感動し夜中に一人で胸を震わせていました、しかし、すべてを読み終わってみれば、次に選ぶ本、次に選ぶ本が、どうしても太宰ほどおもしろくない。これは! ひょっとして! 世の中にあるのは「おもしろい本」ばかりではないのではないか!? と、やっと気づいたという次第なのです。なんと間抜けな。晩生(おくて)にもほどがありますね。

 そう、世の中には、いろんな本があるのです。たくさんの本を読みましょう。好きな作家を持ちましょう。そうしてその中で「おもしろい」と思った本の感想文を書いてください。読書感想文のためにとにかく一冊用意して、「よし、この本で読書感想文を書くぞ!」と思って読み始めたのはよいけれど、もしも読み終わってその本が全くおもしろくなかったとしたら、(そしてもしもそれが夏休み最後の日だったりしたら、)そしてそんな本で感想文を書いたとしたら、それは大変、不毛なことです。読書感想文というものは最低限、自分が感動した本の感想を書くものなのですから。あ、でもできればこちらとしては、名作の感想文が読みたい。私、選考しながら、「人気はあるけどこの作家は凡庸だ」と思っている本に感動なんかしている読書感想文を読むと、昔のオタクの血が騒いでか、いらぬうんちくを垂れたくなってしまうので。本、必ずしも価値有らず。価値ある本を選んでください。