曽我部マコトの言わせていただきます!

そんなに言いませんけど。

餞別と餞別返しの呪縛から逃れられない!

この学校に来たのは11年前でその頃にはそれはそれは素晴らしい文化があった。

離任式前に渡したい人へのお餞別を一律千円で集めて「お返しなし!」と決まっていたのである。

 

しかしほどなくして恐れていた事態が始まった。

すなわちいつかの年にどこかのバカが、

千円に対する「半額返し」なんぞを始めてしまったである。

 

それまではゴールデンウィーク前の休みあたりに転勤先から学校に戻って来た先生方は挨拶葉書をレターケースに入れればよかっただけのものを、

とあるバカたちがそこに500円の図書カードを買ってきて葉書にちまちまセロテープで貼り付け始めたのである。

哀しいことに案の定、

これはあっと言う間に広がった。

この時を境に、

「葉書に図書カードを付けない人は常識のない人」になってしまったのである。

 

しかし転勤者の身になって考えてみれば、

図書カードの手配と貼り付ける手間、

しかも実質もらうのは半額を返した残金の500円、

たかだか500円のためにそこまで手間が増えるなら餞別なんか「もらわない方がまし」なのではないでしょうか。

 

前後して「一律千円」の体制も崩れた。

集める総務課の負担が大きすぎ(金額が合わないことがあ)るからだった。(総務課の年度末の忙しさはそれでなくても異常なので。)

結果、

各自が封筒を用意してそれぞれがその人に対して妥当と考える金額やらお礼の言葉やらをまず封入してその封筒を集めて渡してくれるというシステムになったのだ。

 

そうするとどういうことが起こるか。

「あの人にはお世話になったから1000円では足りないな」などということになり、

そうなるとまたどういうことが起こるか。

つまり、

半額返しは「一律500円の図書カード」だけでは済まなくなってくる。

転勤された先生方は転勤したばかりでどんなにか忙しいのにそれぞれの金額に見合った図書カードを用意しなければならなくなる、

いや、

そこまで来ると実際図書カードなんてそうそう使うものでもないのでもっと気の利いたお返しを金額に合わせて選んでさしあげなければ、

みたいな流れにならざるを得なくなってくる。実際そうなっているのである。

(人によって自分との親密度等を勘案して金額を決めるというのもストレスです。)

(お礼の言葉を考えるのも悩みすぎるタチなので地味にきつい。)

 

私は昨年退職してたくさんのお餞別をいただき(ありがとうございました)、

多大な時間を割いて上記の義務を果たしてほっとした。

でもそれは非常勤になってまだしも時間があったからできたことではないか。

 

さてこの甚大な手間を負担に思うのは私だけではなかったらしく、

そのような経緯を経てこのほど、

新しい方法が生まれてきた。

「お餞別は辞退いたします!」というやつだ。

コロナ禍で家族葬が増えて香典辞退が広がったその流れであろうか。

ああ痛いほどわかるわかるよその気持ち。

しかし、しかしである。

一方でこちらとしてもお世話になった方々であるし自分の退職の時にはよくしてもらったのだし何もしないで送り出すことは到底できないという気持ちもある。

他の先生方に聞くと「お金じゃなくて何か買ってプレゼントしようと思ってるの」なるほど、そうか、そうなるよね。でもそれってここから抜け出したいほどの人にとってはやっぱりご迷惑なんじゃないかな、またこちらとしても金額に沿ったプレゼントなんて見つけられるか自信がないわ(そして悪いけど手間だわ)(そもそも悪いけどっていったいどこの誰に悪いの、だってご本人は辞退しているというのに)、

などと思いながら、

いつの間にかスポーツタオルなどを買ってしまっている私がいるのだ。

 

かくなるうえはお返しをいただかないことを祈るばかりであってそれはお渡しする時に言うつもりだが、

すべては最初に図書カードを貼ったバカのせいであり、

そして私はそのバカの流れをまさに受け継いでいる大バカである。

 

日本って。日本人って。

そしてああ私って。