曽我部マコトの言わせていただきます!

そんなに言いませんけど。

多くの言葉が必要だった。

人間国宝梅若六郎の舞を高校生に、
というので「古今荘」というお屋敷での公演に(1席7千円のところを無料で)演劇部員とともに招かれた。

帰りに車に乗り込もうとして、
観客の一人に呼び止められた。
11年前私が担任をしたクラスの生徒の母親と言う。
覚えていた。
バレエをやっていた、手足の長い、頭の小さい、小柄で顔立ちの整ったあの子。
私はその頃川之江に来たばかりで鬱々としていた。
彼女にも何ほどのこともしてやれなかった。
けれど母親は満面の笑みで、
「先生にはお世話になって、最初のホームルームで言ってくださったあの言葉、あれ、若松さんの言葉だったんですね、あの言葉に助けてもらったから、今度若松さんの講演あるんですけどこれは行かなくちゃと思っていて。」

若松さんというのは愛媛県双海町の市役所の職員だった方だ。
「鮮やかに想像し、熱烈に望み、心から信じ、魂を込めた熱意を持って行動すれば、何事もついに実現する。」
という信念で双海町の町おこしに成功された。
私は確かにその言葉を川之江高校に来た最初のホームルームで言った。
そんな言葉を覚えていて、母親に話したのか、そんな生徒がいたのか、私はあの時あれほどこの地へ来たことを嘆いていたのに。

あの言葉はあの頃私がすがっていたのだ。
生徒にではなく私に必要だった言葉。
多くの言葉が必要だった。
そしてそれは今もかもしれない。