曽我部マコトの言わせていただきます!

そんなに言いませんけど。

ユースレス!

人間国宝梅若六郎の舞を観るため、本日PTA総会後、「古今荘」に向かうことになった。
演劇部員は9名。
うち4名が私とM木先生(女性)の2台の車に乗ることになったのだが、みんながM木先生の車を希望する。
失礼しちゃうわ、と思ったが、
地図で「古今荘」を確認したのも彼女だし、
土地勘やドライブ勘(?)があるのも圧倒的に彼女の方なので、
乗れるだけあちらに乗せていただいて、
私はH子のみ乗せて、
M木先生の車の後をついていくことにした。
自転車隊にはM木先生が用意した地図のコピーを持たせて、さあ出発。

しかし出発したとたんにM木先生の車との間に5台ほど割り込まれた。
あれよあれよという間にどちらに行くやら全くわからなくなった。
H子は川之江の生徒ではないし、二人とも全く場所がわからない。
そこへ自転車隊が通りかかった。ので彼女らから地図を巻き上げて先に行かせたのだけれど、
その地図がそもそもどのあたりの地図なのかがわからない。
「・・・この地図、ソーコばっかりですね。」
「・・・『西川』って家が多いね。」
「・・・『合田』も多いですよ。」
必要な情報を読み取ることができない二人。こんなことならこの地図は自転車隊に持たせているべきだったのでは。やつらは無事に着けただろうか。
もう10分で開演である。いつだったかもこんなことがあった。誰かの車についていこうとしてものの1分で見失って結局到達できなかったこと。しまった、どんなことがあってもすべての生徒をあちらに乗せるべきだった。
と、そこでH子がM木号のM絵にかけていたケータイがつながった。
「向山公園に来てください!向山公園が駐車場です!」

向山公園ではM木先生と部員たちが待ち構えていた。
M木先生は一度古今荘まで行って事情を話して戻って来てくれたそうである。
M木先生と生徒たちの後ろを一心不乱に古今荘まで走る。
本当に、生徒は、いい勘を、しているなあ、私の車じゃ、ダメだもんなあ、
息が上がる、道は大きな川にさしかかった、橋の上をひた走る。
豊かな水が流れて木々の葉がすがすがしい。
ああ、こんなところへ、来たかったんだ、私は、ずっと、こんな中へ、
道を曲がる、大きな古い日本家屋の前に、着物を着た女性たちが立っている。
私たちは中へ飛び込んでなんとかもぐりこみ、最初から公演を観ることができたのだった。

帰りに向山公園で、もう一度、帰途の車割りをした。
電車組をM木号へ、
自宅組を私の車へ。
「じゃあね、M絵、N美。二人とも、私が家まで送ってあげるから、その代わりね、ちょっとの間だけ、あの上まで上ってもいい?」
駐車場の入り口からは、公園に向かって長い石段が伸びている。
「いいですよ!」
二人が笑って頷くので、私は走って上り始めた。
あの上に、木々が緑の葉を揺らしている。
夕暮れまではまだ時間があるのだ。
ふと気づくと、全員が石段を走り上っていた。
M木先生も上っていた。
石段の上は急に開けてグランドになっていて、
そこから秘密の入り口のようにいくつもの木々の小道が口を開けていた。
私はその中に走りこんで薄緑のさらさらとした小さなモミジの葉に触ったり、葉桜の大木をはるかに見上げたりしていた。
「あれ?先生がいない!」
下でM絵の声が聞こえる。私は走って下りて行く。
「山に帰って行った!」
誰が山に住んでんだよ。
「あ、先生が、帰って来た!!」

それで私たちはそれぞれの車に分かれてそれぞれの家に帰ったのだ。
私は眠い。
明日は休みだ。