曽我部マコトの言わせていただきます!

そんなに言いませんけど。

私を叱ってくれた男たち。

その一。
20代半ば、同僚との結婚が決まった後の何かの宴席で、
結婚後働くかどうかという話になった。
仕事を辞める気のなかった私は、
「まあ、じっと家にもいられないですし、気晴らしに仕事はないとやってられないですから。」
というようなことを言ったと思うのだが、
その時30歳くらいの体育教師が声を荒げた。
「うちのかみさんは、障害児のためにできることはないかと考えて障害児教育をやっとるんじゃ。そんな考えで教師をしたら生徒がかわいそうじゃ。気晴らしなんかやったら辞めてしまえ!」
そう言って席を立った。
立ち去り際、
「わかっとるよ、口がすべっただけだろう?生徒のためにやるんだろう?」
と私の顔を見ずに言った。
すみません、と謝ったと記憶している。

その二。
本校に赴任したばかりの頃、
いい舞台を創り続けているつもりなのに全く評価されないことに、私はほとほと嫌気がさしてしまっていた。
ちょうど年齢的にも校内で重要な仕事をするかどうかの岐路にいた。
認められもしないのに続けるには、演劇はあまりにも労力を喰いすぎると感じた。
「手を引こうとも思うんですが、私が手を引くのは愛媛の高校演劇界にとって痛手なんじゃないかと思うんですよね。」
と笑った。
余計なことの一つも言わないとやっていられなかったわけなのだが、
しかしそこで、二つ年上の非常に有能な数学教師が、急に真面目な顔になって言った。
「僕はそんなこと考えたことないで。僕は自分のために仕事する。僕が辞めたら愛媛の数学界が困るやろうなんて、そんなことは思わん。それはおかしいんでないん?」
この人がこんなふうに言うなんて、よほど傲慢な発言だったんだなと思った。

どちらも今ではあまり反省していない。
本音は言う人を選べということだ。