曽我部マコトの言わせていただきます!

そんなに言いませんけど。

脱衣所の二人。

病院に行くと病気のことで頭がいっぱいになって、
あんなにも重大なことが幾千もの人の上に常にさらりと流れ続けている大学病院という所で、
私たちがこの身に受けたあれらの重大なことを、
いったいここで文章に写すべきなのかどうかもわからない、
やっぱりブログなんて書いてる場合じゃないなとも思うけれど、
その夜は温泉の出る旅館に泊まったのでその時のことでも。

夜の大浴場はすいていて、
脱衣所に上がった時には私の他に60代くらいの女性が二人だけだった。
そのうちのとても肉付きのよい方の人が、
ガリガリに痩せている方の人に、
自分の乳房を裏返して、ほら、と言った。
「一回目のね。」
手術の跡を見せたのらしい。
「あんたさ、死にぞこないだよね。」
「死にぞこないだよお、医者だって何で生きてんのかわかんないっつってたから。」
「だからさ、医者の言うことなんか真に受けてたらダメだってね。」
仲がよいのだろうけれど、
土地特有の話し方は四国の私からすればけんかをしているようにも聞こえる。
そしてその内容が私には涙が出るほどありがたいのだ。
しばらくして、
とても肉付きのよい方の人が、
オールインワンと呼ばれるボディスーツの背中のホックを留めてくれともう一人に頼んだ。
ガリガリに痩せている人が体中の力を込めてホックを留めてやって言う。
「あんたこんなの(着て)苦しくないの。」
「これ着てるとさ、体はキッツイけど、心がラックーになんの。」
「へええー。」
私は何食わぬ顔で脱衣所を出たけれど、
ちょっとおかしくてたまらなかった。
だから書きました。