曽我部マコトの言わせていただきます!

そんなに言いませんけど。

体育祭と演劇部。その3

体育祭も終わってみれば、
私の属する赤光団は、
行進最優秀、仮装最優秀、アーチ優秀、応援最優秀、総合優勝という結果。

5種目中4種目優勝、アーチにしても準優勝である。
川之江高校史上いまだかつてない快挙に
赤光団はもう嬉し涙で泣きじゃくり、
感極まって、
誰でも胴上げしまくって、
踊って吼えて、
ああもう収集がつかない、という状態であった。

後片付けの際、
「先生、応援どうでしたか?」
と誇らしげに応援団長が聞く。
「素晴らしかった。苦労したけど報われたね。」
「あれ、先生、泣かんのん。」
別の生徒が合いの手を入れる。
「Y先生なんか、もうボロボロよ。」
「ああ、Y先生はね。」
と、私は笑った。
Y先生は体育祭に本気だったからね。

勝って泣くのは命を懸けた者の特権である。
この優勝に、私ごときが泣くべきではないだろう。
私は体育祭には深く関わっていないのだから。

10年以上前のことだ。
まだ演劇部の顧問をする前、
私は生徒指導困難校と呼ばれる所にいた。
体育祭では、
仮装にも応援にも、
リーダーになる生徒がいなかった。
私は自分がリーダーになり、
台本を作り、
曲を選び、
踊りの振り付けを考えて、
クラスをダントツで優勝させ続けた。

あの頃なら、泣く権利はあったと思う。
泣かなかったけど。
ただ、抱き合って泣く生徒を見ていた。
ほんの束の間、苦労が報われる瞬間だった。

私が赤光団を表す赤色のTシャツを着ているのを見て、
普段国語を教えている生徒がこう言った。
「先生が団のTシャツ着るなんか思わんかった。興味なさげやん。」
とうとうそうも思われるようになったか。
興味なくはないんだけどね、
二つのことに命は燃やせないのだ不器用だからというか事の種類が似てるから。
国語の指導となら両立できるけどね。

さあ、体育祭が終わるや、
地区大会の練習は佳境に入る。
というか、
今年は本当に、
明日が初めての練習なのだ。
大会まで2週間を切っている。
正式なキャスティングも明日発表。
だいじょうぶだ。
これまでダテに練習してきたわけじゃない。
私は学校での存在をさらに薄くして、演劇の練習に魂を移すだろう。