曽我部マコトの言わせていただきます!

そんなに言いませんけど。

卒業式の演劇部員バナシ。

卒業式で私が気にしているシーンが二箇所ある。
一つは「答辞」、
もう一つは、各部「功労賞」の返事の声である。
四国大会以上の大会に出場した生徒が呼名されるのだが、
演劇部の返事の大きさはちょっとした「名物」になっている。

今年の声も大きかった。
今年などは呼名する学年主任の声まで、その大きな返事につられてどんどん大きくなっていって、ちょっとおかしかったくらいだ。
けれども打ち止めの生徒のあまりに大きく真剣な声は、
そんな「ほほえましい」などという気持ちさえ吹き飛ばした。
ひざに置く手も震えるほどこみあげるものがある。
私が感動するのは、キャストだけでなく、スタッフの声までも必ず大きいというところだ。
演劇部の呼名が続く間、全員の声がそれぞれの音色で精一杯大きく体育館に響き渡る。

なぜこんな大きな声で返事をするようになったかというと、
7年前の部員が(「ホット・チョコレート」の全国前に卒業していくメンバーだった)、
卒業式前日の練習で(当時はこの日も練習していたと思われる)、
「ハイ!! ・・・先生、このくらいでええ?」と聞いてきたのが発端だ。
私としても、ほかならぬ、三年間命懸けで打ち込んできた「演劇部」の功績で名前を呼ばれるのだから、
全身全霊で返事してほしくはあった。
しかし、まさか「返事の練習」をする人間がいるとも思わず、その時は笑ってしまったのであるが、
「ハイ!!」と練習し続ける彼女らを見、
また翌日の卒業式でのあまりに見事な返事を聞いて、
それからは「一世一代の返事を。」と求めるようになったわけなのである。

ところで私はそれを、
私の指示で大きく出せと言ってあるから大きい声が出せるのだと思っていた。
ところが近年、演劇部に追いつけ追い越せと各部が大きな声を出すよう指導しているそうなのだが、
それが、出ないのだそうだ。
ディベート同好会が全国に出場した年、顧問の先生が式後に私に言いに来た。
「僕は前日に大きな声を出すように指導したし、彼女らは指導にはまっすぐ答える子たちばかりです。しかし、演劇部のような声は出ないのです。」
私は驚いた。
ああ、そうか、大きく出せと言われたから出るのではない、
毎日毎日キャストもスタッフも一斉に柔軟と発声の練習をずっと三年間続けてきた、
あの成果が現われて全員の声があそこまで出るのか。

今年は空手部の先生が「演劇部に負けるな!」とチャレンジさせたが及ばなかった、と悔しそうに話しておられた。
「文化部だって、運動部や演劇部に負けない声を出して!」と指導したという先生は、
「運動部には勝てる、でも演劇部にはムリ。」と言われたと笑っていた。

あの返事の声を聞いていると、
私たちはこの三年間演劇部のことを本当に本当に真剣に思ってきたんですよ、と言われているようで、
ホント目頭が熱くなる。
今年の演劇部卒業生は、まあ不器用で、何度もしこたま怒ってきた学年であったが、
きちんと有終の美を飾ってくれたなあ。

卒業公演も、観客は少なかったけど、生徒創作で自分たちだけでやり切った。
まとまりが悪かったとは思えない、
それぞれがそれぞれを大切に思ってこの半月練習してきたのだということがひしひしと伝わってきた。
部員というのは私にとって「演劇部を大切に思う仲間」でもある。
今年の卒業生もきっちりそんな仲間に育った。
みんな幸せになってほしいぞー!!!