7月四国演劇祭後、
全国大会直前の難題はざっくり言うと2点あった。(思い切りネタバレありますので観てない方は読まないでね♡)(青春舞台、観てくださいね♡)
1点目は、
「『明日』は何の問題もなく『いぶき』が出演できるのではないか」という問題、
2点目はそれと地続きだが、
「代役がいるのなら『マルハシ』の言動は不自然ではないか」という問題だ。
さまざまなシーンの「嘘」をつぶして練習していくわけだが、
この2点は練習以前に内側からの変更を迫る難題だった。
1点目は、
少量のセリフ変更と、
いぶきに演技を変えてもらうことによって(劇中劇をヘタに演じてもらうことによって)乗り越えられたかと思う。
それは微妙な一線で、
あまりにヘタだと観客にハナから代役だとバレてしまうし、
だからと言ってうますぎると上記の問題が発生する。
「いぶき」役の生徒は本当に芝居の達者な生徒であって、
直前によくこの変更に対応したと思う。
この役は「狂言回し」の役であるから圧倒的にセリフ量が多く難しく、
うまくこなさなければ芝居全体が回らないのにおいしいところは他の役が持っていくという、言ってみれば損な役回りだったとも思う。
それにしても、
こう書きながらうまくできた脚本だ。
越智くんは実力のある彼女を信頼してこの役を書いたのだ。
彼女はよくもそれに応えたと思う。
2点目である。
1点目が解決したために目立たなくはなったのだが、
結局全国大会が終わっても、
私はこの点について考え続けていた。
うちの部は層が厚い方で(川之江の時も)、
直前に役者に穴が空くという危機も何度か経験しなかったわけではないのだが、
十分な力を持つ生徒がキャスト以外にまだ残っていることが多く、
結局無理にでもその穴は埋めて来たのである。
「マルハシ」はどうして「代役生徒では上演したくない」と言うのだろう。
「マルハシ」のセリフは、
芝居をドラマチックにするための「嘘」に過ぎないのではないか。
全国が終わって国立劇場での上演が迫っていた。
さて出発の3日前だったか、
「ミナト」役の生徒が、家族がコロナに罹ったかもしれません、と言った。
何と答えたか覚えていない。
今日PCR検査を受けて明日結果が出ます、と言う。
陽性であれば彼は濃厚接触者である。
自宅待機期間中に国立劇場が終わってしまう。
こんなことがあるだろうか。
「ミナト」が出られないかもしれない。
代役は?
考えることができなかった。
彼が出られないのならこの芝居は「降りる」しかない、
そう考えてふと思った、
「マルハシ」、おまえの気持ちはこうだったんだな、
いやそんなこと言ってる場合じゃない、
信じてるぞ、なんだかわからんがうまくいくと信じているぞ。
翌朝、
陰性でした、
のLINEが来て無事出場できることになったのだが、
その日の練習でこの話を知った部員たちの心中はどんなに「マルハシ」だったことであろうか。
結局この後この問題で脚本を変更することはなく、
ここは多分うまくいったのではないかと思われる。
(心情のリアリティの深度が違う。)
難題は二つともクリアして国立に臨んだ。
それにしても、
実生活でも最後までコロナに振り回されたことであったとここに記しておこう。
上演はそれ自体が奇跡なんだ。