曽我部マコトの言わせていただきます!

そんなに言いませんけど。

漫画のセリフのハナシのつづき。

槇村さとるの「愛のアランフェス」も好きでいろんなセリフを覚えているが、

読んだ当初はそうでなくても年を重ねると意外なセリフが胸に響いてくるもので(とにかくたくさん覚えているので何かの拍子に何かが浮かんでくるわけですね)、

この作品の場合のそれは、

その昔有名なフィギアスケーターだった主人公の父親が招かざる客に言ったセリフ、

「帰ってくれ。奥には病人が寝ているんだ。」

という何の変哲もないものである。

奥には主人公の母親が臥せっている設定だったと思うが、

私は中年以降に幾度かこのセリフを思い出して、

自分のこの体の弱さは、

別の世界線であれば誰か家人にこのように言われていたくらいの人間だったのではなかろうかということをよく考えたのだった。

実際に私の父方の祖母は、

私の物心ついた頃にはすでに病人として家の奥で寝ていたもので(主人公の母親と同じように)年を取る前に亡くなってしまった。

それを私はこんなふうに1年365日朝から晩まで働いているというのはいったいどうした間違いなのだろうかと時折ふと我に返って考えたのである。

「帰ってくれ。奥には病人が寝ているんだ。」

 

今定年までを働き終えて思うのは、

今くらいの負荷であれば「奥で寝ている病人」ではなくていられるのかもしれないなということだ。