曽我部マコトの言わせていただきます!

そんなに言いませんけど。

笑わないバトン部。

私がこの学校に来た当初のバトン部はヘタだった。
練習をしている様子もあまりなかったが、
体育祭の開会式では、
ミニスカートでバトンを振りながら皆の行進の「先導」をするのだった。

途中でバトンを放り上げて空中でつかんでまた回す、という技を披露するつもりらしいのだが、
ほぼ全員が放り上げたバトンをつかむことができず、
ばたばたと時間差でグランドに落ちるそのバトンを、
彼女らはてへてへ笑いながら拾い上げてはまた振り回して歩いた。
一通り同じ振り付けが済むと、
またバトンを放り上げてはまたばたばたと落とし、
そしててへてへ笑って歩いていた。
あんまり滑稽なので私は心中あざ笑っていたものだ。

三年ほど前からだろうか。
卓球場のガラス窓を鏡にして、
バトン部は遅くまで練習を始めた。
地域のダンス集団に入っている部員が他の部員を指導し始めた。
だんだん部員も増えてきて、
一大勢力といった感じになってきた今年の体育祭、
彼女らは例年どおりの振り付けで、行進の先導をした。
そして例によってバトンを放り上げた。

それでも数人は落とすのだ。
けれども彼女らは笑わない。
踊り続けるメンバーに遅れを取らぬよう必死の面持ちでバトンを拾うと、
何事もなかったようにもとの振り付けに返っていく。
ああ、笑わない、バトン部は笑わなくなった、と思っていたこの秋、
彼女らは県で優勝して全国に出場することが決まった。

笑わないことなんて氷山の一角。
彼女らの努力に涙が出る。