曽我部マコトの言わせていただきます!

そんなに言いませんけど。

授業三つ。

先週研究授業をやって、
実は授業には自信のある方だったんだけど、
学校が変わると生徒の質が違うのでこの1年、
これでいいんだろうかいいんだろうかと恥ずかしながら悩み続けて授業を作ってきたような次第で、
けれども今回かなり絶賛されたので本当によかった。
いや本当に褒められた。(終わった後は委員長まで「大成功や・・・!」とつぶやいていた。ここの生徒は「先生思い」と言うか「先生目線」と言うか。)
何はともあれほっとした。
今年度は「大会に出場できたこと」と「この研究授業を乗り切ったこと」が2大イベントだった、と言えるくらいほっとした。
少しずつ今いる場所を住みやすくしていけたらいいなと思う。
そのためになんだか毎日ものすごく慌しくて、
まだ住みにくいんである今んとこ。
 
研究授業が終わっても続けて次のクラスの授業に向かう。
現代文は「舞姫」で、
この教材ではなんと生徒に授業をさせるのがこの学校の伝統である。
全く所変われば、である。
この日は男子6人の班。
豊太郎とエリスの出会いの場面。
班員が自分たちで作ったプリントの問いを生徒に指名しては答えさせるのだが、
さて指名された一人が「わかりません」と答えたところで異変は起こった。
「おいおい、『わかりません』とか言ってるよ、どうする?」
背の高いその班長がクリアな声で班員にそう呼びかけたのだ。
「おい、どうする? 対策を考えようぜ、みんな集合だ!」
教壇の上で腕組みをして頭を寄せる6人の班員。
なんだこの明らかに芝居がかった雰囲気は?(だいたいなんで標準語?)
「わからないんだってよ、しかたないなあ、それじゃあみんながわかるように、『劇』にでもしてみるか!」
そういうことか!
(「わかりません」もサクラだったか!)
みんな拍手喝采である。
「というわけで、これから僕たちの班の劇・『予習してなくてもわかる舞姫』を始めます。」
という口上から授業中、
私の目の前で私の知らない劇が全く私の手を借りずに展開されていったのである。
「豊太郎」も「エリス」も「エリスの母」もみんな男の子。
(ついでに言えば「豊太郎心の声」も「教会の門」も「エリスの家のドア」も男の子。)
おもしろい。
おもしろかった。
ああこんなおもしろいことがあるのか。
プリントの設問が少なすぎるから対策を講じた方がいいと事前に班長に忠告しておいたのだが、
劇をやるつもりでのあの分量だったわけだ。
2時間練習したらしい。
テスト前だと言うのに。
班長は普段クールそうに見える生徒である。
してやられたという感じだった。
 
劇と言えば違うクラスの今日の「舞姫」。
また男子班。
今度はエリスの妊娠、相沢の説得、豊太郎の迷い、
複雑な場面を理解させるには劇にするとわかりやすいのはそりゃもうそうだが、何分テスト前日である。
練習時間が取れないねえ、と班長に振ると、
「いえ、〇〇がいますから。」と芸達者な生徒の名を挙げてはいた、
しかし「練習時間7分です。」と言って本当に劇を始めたのには恐れ入った。
どうしてそれが可能だったかと言うと、
「エリス」を、その芸達者な生徒が、
「エリス」以外のすべての役を、その優秀な班長が演じたからである。
おもしろい。
本当におもしろい。
「接吻」のシーンはやんややんやの騒ぎになり(もちろんやめさせ)、
最後は「エリス」がなぜか「相沢」になって(途中で「一等ドロシュケ」にもなっていた)、
大いに盛り上がって劇を終えた。
かなり適当なセリフだから後からフォローは必要だったがそれがどうしたなんて楽しいんだ。
 
優秀である。
こんな喜びというのもあるのだな。
全く劇になど興味のない生徒たちの創る劇。
1年間の終わりにやった授業三つ。