曽我部マコトの言わせていただきます!

そんなに言いませんけど。

自分から。

ずっと必死で勉強してきたS(女子)の浪人が決まった。
勉強と運動部と学校行事のリーダーを精一杯こなしてきた。
受験勉強は2年生から始めていて、
その頃から毎日の睡眠時間はずっと5時間くらいだったと思う。
それはもちろんテスト前とかだけじゃなくて。
部活の朝練もあったのに。
出した課題はすべて(すべて!)やってきたし、
問題集や赤本も必ず(必ず!)計画通りに進めては添削に持って来た。2年生からだ。
授業中もっと早く理解する子はいくらもいた、
決して要領のいい子じゃない、
けど努力して努力していつの間にか学年上位にいるのだった。
手紙をもらった。
 まだ、私やれるんですって。
 まだできるからもう一年やってこいですって。
 こーんなに頑張ったのにまだできるんです私。S、恐るべし。
マスクをつけて来ていた。
マスクは涙の跡で濡れていた。
明るくて、一人いるだけで授業の雰囲気が全く変わるのだった。
誰にでも分け隔てなく近づく。
私にさえ。
私は年賀状は出さないからと生徒に住所は教えないのだけど何かの拍子にあの明るさに教えてしまっていたらしい、
去年彼女から年賀状が来た。
私は一枚だけこの学校の生徒からの年賀状を持っている。
私は彼女がセンターに失敗して私大に失敗してそれから本命を受けに行くとき、
応接室に呼んで手を握った。声が震えた。力をあげたいと思った。彼女が力を出し切るための力を。
手紙にはその時のことが書かれていた。
 
つらくてたまらないと、
心が通い合わないと、
この学校に来てもう2年も経つのに私がみんなから背を向けるのは、
相手が無条件に私を愛して近づいて来るのを待っているからだ。こんなふうに。これほどまでに。彼女の愛の持ち分はまるで無尽蔵レベルで、私はなんてばかだろう相手にここまでの愛をもらわなけりゃイヤだとわめいていた。私はきっとそんなふうにしてしか人間関係を築いて来れなかった。そうだった。
彼女はこれから苦しい1年間を送る。
そんななけなしの彼女はそれなのにさらに私に「与えて」くれる。
来春のいい報告を祈る。幸せを祈る。