自分が演劇に出会ったのは平成6年、34歳頃。
遅い出会いだったと思う。
だから、
誰かに教えてほしかった。
みんな演劇について私よりずっと詳しいはずだった。
なのになんで肝心なことは何一つ教えてくれないのかわからなかった。
どこかに簡単な正解があるのに、
私が至らないからみんなはっきり教えてくれないのだろうかと思っていた。
さて初めての大会で「それぞれに如月」を上演したとき、
あれよあれよと地区大会、県大会を抜けて四国大会に進むことになってしまった。
四国大会なんてこりゃ素人の自分の手には負えんワイ、
だからいろんな人のアドバイスを聞くかいっそできれば誰かにお願いするしかあるまいと思っていた(実際いろいろ尋ねたし任せようともした)のだが誰も頷いてくれない。
しかしその中で県大会が終わった頃だったかある大先輩の先生がアドバイスをくれたのだった。
「あの留年しそうな生徒が交通事故で死ぬというところね、」
「ハイ、」
「もっと衝撃的にした方がいい、」
「なるほど、」
「たとえば、」
「たとえば?」
「ピアノでガガーン!!って袖で鳴らすとかね。」
彼の死は今で言うところの「ナレ死に」だ。
「スタンドバイミ―」のラストでリバーフェニックスが語り手のナレーションの中でさらりと死んでいくようにさらりと観客にその死が伝えられるのである。
(「それぞれに如月」自体が「スタンドバイミ―」のオマージュ的なところがある。BGMがまさに「スタンドバイミー」だしね。)
もしかしたらそんなふうにする方法もあるのかもしれないけど、
私はその時はっと、
「他人に頼ってはいけないのだ」とわかった。
「もしかしたら誰も正解なんて知らないんじゃないか(そもそも正解はあるのだろうか)」なんていう当たり前のことに、
その時初めて気づいてしまったのだ。
重大なことを教えていただいてしまった。
誰も正解を知らない中で、
あるかないかもわからない正解を目指して、
生徒たちと自分の力で走って行くしかないのだ。
なんて頼りなくて果てしなくてつらく苦しい道のりなんだろうか演劇という道は。
今もまた行く手は長く果てしない。