何十年か前のある日、
「テレビの部屋の住人」は学校から帰って来ると、
あなたは僕に直してほしいところはあるか、と明るい顔をして聞くのだった。
直してほしいところ? そうだね、玄関の靴を揃えて脱いでほしい、かな?
それだけ?
それだけ、ではなくて、そうだね、
とあと二つくらい何かつけ足したと思う。
すると彼は満を持したように私に尋ねた。
僕はあなたに何を直してほしいと思っていると思う?
あ、そう来るか。
え、何を直してほしいのかな?
彼は大きく息を吸って、
一つもないんだよ、僕は、あなたに直してほしいところは一つもない、すごいでしょう、さっき考えていて、びっくりした。
「なんであの子はあんなにあなたのことを好きなのか」と、
姑小姑にため息混じりに言われたことがあったけど、
本当にねえ。
そんなこと、思い出した。