曽我部マコトの言わせていただきます!

そんなに言いませんけど。

一つの時代の終わりか。

ヤンキーにとっては高校生活最後の、
越智くんにとっては実に15年ぶりの役者という、
そんな二人芝居が昨日終わった。
 
反省会も片付けも終えて解散する。
いつか日も暮れて外は雪、
あまりの寒さに無口になって「マイ足温器」に足を入れると、
越智くんがストーブを引っ張って来てくれて、
そのストーブに引き寄せられたヤンキーが近寄って来て永遠に続く無駄話をする。
ぎゅうぎゅうな日程で練習したから疲れている。
ヤンキーがミカン箱を枕にして横になると、
ああなんだか長丁場になるんだろうなと思いながら、
その場にいた誰も帰ろうと言わないのでくだらない話は延々と続き、
ああそう言えばあのときはああだったよねこうだったかねとみんなも相槌を打っては笑ったり黙ったりする。
一瞬ヤンキーが泣きそうになるけど、
泣いたら人相が変わって爆笑になるからねと爆笑してそんな話も通り過ぎて、
元部長のバレリーナRがストーブを囲む私たちをフツーにばしゃばしゃと写真に撮る。
 
練習中はある日片方に感心すれば翌日にはもう片方がぐんと伸びてやって来るという奇跡を何度も経験して、
力は拮抗しているかに見えたんだけど、
5日前に初めて数人の客を前に通して見れば、
本番慣れしていない越智くんとヤンキーの差は歴然、
日増しにその差は開いていくかに見えたところが、
最後の数日で越智くんが見事な役者に返り咲いた。
こんなすごい役者たちに出会えたのか。
私にとっては高校演劇を始めた「最初の生徒」と今のところの「最後の生徒」の共演だった。
 
さて越智くんは1年かけて大幅に減量してこの芝居に臨んだのだが、
実はもともと高校時代は痩せていたのをここ十数年巨漢で通していたのである。
そんなこんなで帰り際にはしみじみと、
「十年以上着ていた20キロの着ぐるみを脱いで役者になったねえ。」と話しかけると、
越智くんも、
「着てましたねえ。」と返事した、その後なんだか少し黙って、
「オレなんで着とったんやろ。」とぼそっと言ったので大笑いしてしまった。
その後はまた、
「オレは十数年着ていた着なくてもいい着ぐるみを脱いで役者をやりました。」とか食えない顔で笑いながら言うのでまた笑ってしまった。