曽我部マコトの言わせていただきます!

そんなに言いませんけど。

3月2日のこと。

卒業式の翌日、
明日はヤンキーが出発するというのでオーディションの練習の後なんだか急に6人で晩御飯を食べに行くことになった。
近所のうどん屋で例によってたわいもない話をしてうどんと焼き鳥とおやつとか食べて帰る段になった。
一人車に乗れないのでD貴を自転車で来させていたから、
D貴だけは別に帰らなければならないのを、
さて駐車場ではいつまでたっても帰ろうとしない。
「さあもう帰るよ。お別れをしなさい。」と促すと、
「じゃあ元気で。」とバレリーナRに挨拶を始める。
「違うだろう、Rとはまた会うんだよ。 K(ヤンキーのこと)だろう。Kとお別れをするんだよ。」
そこでD貴とヤンキーがはっしと抱き合った。
ので、車の中から女子連がやめてー!と爆笑する。
D貴は泣いている。
「長い長い! いつまで抱き合ってんの!」
越智くんが笑う。
「いつかは別れなきゃいけないんだから!」
私も冷たく言い放つ。
いつまでも振り返って手を振りながらD貴が国道を消えて行った。
 
ヤンキーは家まで送って行くことにしていたので、
さて次は女子連を落とす。
学校前のコンビニの駐車場でバレリーナRと裏番Hがヤンキーとお別れをする。
フェンダーミラーに映る三人は笑顔のまま泣いて握手していた。
ああ、いい年頃の若者たちだ。
「芝居みんなで観に行くし。」と裏番H。
「映画とか出ん方がええ。アップとかない方がええよ。」とバレリーナR。最後まで辛口ですね。泣いてるくせに。
まあ俳優になれるといいね。
名残を惜しんで時間が経って行くうちに、
いやな予感はしていたのだがさきほど一世一代の別れを済ませたはずのD貴がそこを通りかかってしまった!
「あー! また一からやり直しだよー!」
越智くんが頭を抱える。
D貴は嬉々として自転車をコンビニの駐車場に乗り入れて来た。
うどん屋での時間が全く無駄にー!」
またひとしきり別れを惜しんでヤンキーを車に乗せた。
 夜の川之江高校前を過ぎる。
「K、川高だよ。」
「ああ、川高ですね。」
 
ヤンキーの家まで着いてヤンキーを車から降ろす。
私も降りて最後の握手をする。
小雨の雨脚が少し強くなって、
越智くんが上着を脱いで私の頭にかけてくれた。
「体に気をつけて。」
この手を離す時が来たんだなと思う。
ハザードランプが点滅して規則的にヤンキーの顔を照らし出す。
手を伸ばしてその頬に触れた。