曽我部マコトの言わせていただきます!

そんなに言いませんけど。

父の葬儀後の「事件」。

父親の葬儀の翌日、
私はまだ起き上がれなかった。
葬儀自体も苦しくて寺の別の間で横にならせてもらっていたのだし、
斎場にも行かずに家で休んでいたのだが、
翌日になっても少しも回復しなかった。
それは「死んでしまいそうな」だるさだった。
 
昼過ぎだったか、
階下で母と兄の話し声がするのに気づいて下りて行った。
居間のソファに座ったが、
二人とも長いこと気づかず、
多分気配がないんだろうなと思った。
案の定しばらくして兄が振り向いて「うわ、〇〇(私のこと)、おったんか!」と驚いた。
「誰にも知られずに死ぬのは嫌だから下りて来た。」と、
私はやっとの思いで言った。
二人とも黙っていた。
(「嫌な言葉だった」と、後に兄はこの時のことを話した。)
私はスイカかイチゴが食べたい、と言った。
兄が急いで出先の妹に電話をしてイチゴが来た。
私は無言でイチゴを1パック食べた。
(「俺は〇〇(私のこと)が何か食べたいというのを初めて聞いた」と、後に兄は何度もこの時のことを話した。)
 
JRのチケットを取っていたのでその翌日だかに川之江に帰らなければならなかった。
台風だった。
妹があわれがって弁当を作って宇和島駅まで送ってくれたが、
それから二駅目くらいで台風のためなんと電車が止まってしまった。
しばらくして運転は再開したが、
新居浜駅まで来たときにとうとうみんな下りてくれと言われた。
臨時バスが運行されて私はそこに乗り込んだが、
それは岡山直行だと聞いてまた降りなければならなかった。
へとへとだった。
タクシーの無料券をもらってタクシーに乗った。
土砂降りだった。
そうして高速に乗ったところで、
今度はなんとタクシーが、ガターン、ガターンと、異常に大きな音を立て始めたのだ。
「あれ、おかしいな、普段こんなことはないんだけど、ちょっと、すみません。」
運転手が高速の路肩に車を停めて点検を始める。
そんなことってあるんだろうか。
タクシーが故障?
そうして新居浜は、
高速の下は、
あの人の眠るところなのだった。
私は帰って来てからめまいを起こして長いこと寝込んだ。
起き上がろうとすると吐いた。
それはまさに「死んでしまいそうな」だるさだった。
 
以上が「〇〇(私のこと)が『連れて行かれそうになった』事件」のあらましである。
数年にわたる看病と復帰後の仕事、
その直後の父の死のためのふるさととの行き来、
体が弱っていたのだろう。
多分それだけなんだろうなと思う。