曽我部マコトの言わせていただきます!

そんなに言いませんけど。

財布を忘れて。

毎日やらかしているわけではないが今日は財布を忘れて行った。
「冷たいものは飲まない主義」だったのは昔のことで、
現在毎日自販機でクリスタルガイザーやポカリを買っている。
飲まないと調子が悪くなるのに引き出しの中には80円しかない。

その昔それは30年ほども前、
私はその日やはり財布を忘れていた。
そしてその日何かのために必ず電話をしなければならなかった。
当時は携帯電話もなくて私用連絡手段は事務室前の公衆電話だけだったのだがそれを使うその10円がない。
その時はっと、そしてしみじみ思ったのだ。
「私には10円を借りる友達さえいないんだなあ。」

10円足りない。
私は暗澹たる気持ちになった。
10円を借りなければならないということには前述のような心情が伴うのである。
それは頼めば貸してくれるだろうけど笑ってばかだなあと言ってくれるような人を思いつくことはできなかった。
とりあえず保健室に行ってM先生に後で返すからポカリを1本ちょうだいと言った。
「どうぞ。冷たい方がええ?」
「ありがとう。財布忘れて。」
「あ、貸すよ。」
「いや、ポカリあるから。」

ポカリを飲んでいると小論文指導の3年生女子が現れた。
教えている生徒じゃないけど体育のU先生(女)から指導を頼まれたのである。
U先生が顧問をしているハンド部の部員らしい。
「どうぞそこ座って。」
「はい。あ、その前に。」
「え?」
「これどうぞ。」
手渡されたのは、クリスタルガイザーだった。
「U先生が、行く時はこれ持って行けって。」