曽我部マコトの言わせていただきます!

そんなに言いませんけど。

健闘を祈るよ。(読書感想文2年生選評 H11全校プリント掲載)

 読書感想文というと思い出す作品がある。高校時代、後輩が書いたもので、リルケの詩集の感想文だった。県で入選か何かをしたのだろう、学校新聞に全文が掲載されたために読んだのだ。妹の友人の書いたそれは、「詩の感想文」というよりは、まるでそれ自体が散文詩のようだった。

 「夜空に輝くあの星たちは、ほとんどが光を放ったあと、既に消滅しているのだという。」途中出て来た印象的なその一文は、クライマックスでこう返されていた。「私は祈る。あの星たちのうちいくつかは、まだ消滅していないのだと。」

 私は自分より年下の者がこのような言い回しをするという事実に驚いたし、それにもう何かは忘れてしまったのだけれど、彼女が祈っているのが額面どおりのこと―星たちの存続―だけではなかったことにも思い至って本当に驚いた。早熟だった。彼女はその後私の知っている少年と付き合いはじめたと聞いた。少年はサクソフォンがうまく、違う人と結婚をして、そうしてまだ青年だったある日、自らの命を絶った。

 私は二人が一緒のところを見たことがなかったけれど、電話口でその報を受けて、しきりにあの読書感想文を思い出していた。今となってはその時の気持ちも説明できる。文学や芸術といったものと一般社会との折り合いの悪さや、そのような傷つきやすい心を持った者同士が惹かれあったであろうことについて。

 このような作品に出会えるであろうかと、毎年みんなの読書感想文を読むのである。特選の大西さんの感想文はよくできていたのだけれど。他のみなさん、健闘を祈るよ。